ブロックチェーン技術にはコンセンサスアルゴリズムという概念が存在します。マイニング(採掘)を行う方ならば知っておきたい知識となりますので、当ページで簡単にまとめさせて頂きます。
目次
コンセンサスアルゴリズムとは?
コンセンサスアルゴリズムとは、ブロックチェーン技術の仕組みの一つで、「合意(コンセンサス)」+「手順(アルゴリズム)」の意味となります。
そもそもブロックチェーンの仕組みを簡単に説明すると、世界中の取引情報をブロック毎に暗号で鍵を掛けて保存、それをチェーン上に繋げる事で取引情報の改ざんなどが不可能となる仕組みの事です。
このブロック毎に取引情報の監視と計算、暗号を掛ける作業が所謂「マイニング(採掘)」と呼ばれるものですが、正当な取引が行われたかどうかを監視する際に、「正当な取引か不正な取引か」をブロック毎に決めて行く必要があります。
この振り分けを決定する課程で「合意(コンセンサス)」の「手順(アルゴリズム)」が必要となる訳です。
簡単にザックリ言えば、「コンセンサスアルゴリズム」とは、ブロックチェーン技術上のルールブックのようなものと考えれば判り易いかもしれません。
コンセンサスアルゴリズム種類と一覧
仮想通貨のコンセンサスアルゴリズムは大きく分けると5種類存在する事となります。5種類のアルゴリズムにはそれぞれ採用している通貨がありますので一覧にまとめておきます。
PoW | BTC/BCH/LTCなど |
PoS | ETH/ADAなど |
PoI | XEMなど |
DPoS | LSK/EOSなど |
PoC | XRP/ZIPなど |
コンセンサスアルゴリズムにはそれぞれ特色や、メリットやデメリットが存在しますので、比較内容などをまとめていきます。
POWのメリット・デメリット比較や採用通貨まとめ
POWとは、「Proof of Work」の略で、仕事の証明です。ビットコイン(BTC)などのシステム運用の為に定められたマイニング(採掘)を行う上でのルールとなります。
POWのメリット
最初に生成されたコンセンサスアルゴリズムとしての認知度
POWでは、莫大な量の演算の中であるハッシュ値になる値を見つけた人(採掘者)がブロックを承認する人となり、次のブロックを生成する事となります。この仕組みはブロックチェーン技術の基礎となる仕組みでもあります。
データ改ざんに強い
そして世界中全ての採掘者がデータを監視する事となるので、データ改ざんを行う為には世界51%以上のマイニングシェアを握る必要があります。その為に必要なマシンと電力のコストを考えるとデータ改ざんは現実的ではないという事が理解出来ると思います。だからPOWはデータ改ざんに強いと言われています。
POWのデメリット
莫大な電気代が必要となる
POWでマイニング(採掘)をする為には、莫大な電気が必要となります。電気を大量に消費しなければならないこの仕組みは地球環境に悪影響を及ぼすとして、国際問題にまで発展しています。
演算51%占有でハッキングの恐れ有り
POWは世界中の演算量により合意が形成される仕組みとなります。つまり不正な取引を承認したい採掘者が世界のシェア51%を超えた場合、改ざん内容をそのまま承認してしまう恐れがある訳です。前述の通り、それに掛かるコストを考えた場合、現実的ではありませんが、それでも可能性がゼロではないというのはデメリットと考えるべきなのかもしれません。
POWを採用している主要の仮想通貨
ビットコイン(BTC)/ビットコインキャッシュ(BCH)/ライトコイン(LTC)など
POSのメリット・デメリット比較や採用通貨まとめ
POSとは「Proof of Stake」の略で、保有による証明です。コインの保有量などによってブロックの承認比率が変わり、新規発行の仮想通貨が貰える仕組みのことを指します。マイニング(採掘)に対して、フォージング(鋳造)とも呼ばれます。
POSのメリット
莫大な電力を必要としない
POSは通貨の「保有量」によって承認をするノードを決定する為、POWのように莫大な電力を必要とはしません。
51%攻撃へのリスクは事実上無効となる
また51%攻撃へのリスクは、通貨全体の51%保有が必要となる為、莫大な資金が必要となります。恐らくPOWのマイニング(採掘)シェア51%を占有する何十倍ものコストが必要となります。またデータ改ざんを行ったとしてもその通貨の51%を保有しているのは自分自身となる為、データ改ざんを行えば、データ改ざんされた事で通貨の価値が著しく低下する為、何のメリットも無い(むしろマイナス)になります。
承認スピードが速い
POSはランダムに承認者を決定する為、承認のスピードが速くなります。
このようにPOSはPOWの弱点を解決したコンセンサスアルゴリズムとなっており、2018年にはイーサリアム(ETH)がPOWからPOSへ移行するなどの動きも見せています。
POSのデメリット
通貨の流動性の低下
POSの場合は、保有量で承認をするノードが決定する為、通貨保有者は貯めこんでしまう事となり、市場に出回る通貨が少なくなり、流動性が低くなります。
貧富の差が拡大する
POSは多く保有している人が、承認の報酬も貰う仕組みとなり易い為、保有量の多い人がどんどんお金持ちになって行くシステムとなります。それでは現代の資本主義と何も変わらないですよね。お金の在り方を大きく変える大義名分を失ってしまう事になりかねません。
POSを採用している主要の仮想通貨
イーサリアム(ETH)/カルダノ(ADA)/エックスピー(XP)など
POIのメリット・デメリット比較や採用通貨まとめ
POIとは、「Proof of Importance」の略で「重要な証明」という意味となります。つまりその通貨にとって重要な位置にいる人を判断、そしてその人に権限を与える仕組みです。ブロック生成を行う事をPOIでは「ハーベスト(収穫)」と呼びます。
重要度を示すスコアは「保有量」や「取引回数」「取引量」などの指標から毎回ブロック生成者を決定する仕組みです。
POIのメリット
流動性と分散化、平等を掲げた新しい仕組み
POWやPOSの弱点を上手く補う形で生成されたコンセンサスアルゴリズムで、通貨を多く保有する事や取引に参加する事がネットワークへ大きな貢献を果たす形となります。流動性も上がりますし、莫大な電力や51%攻撃のリスクも軽減した新しい仕組みとして注目されています。
POIのデメリット
貢献度に保有量が関係している為、大量に保有している人が承認出来る確率が高くなります。POSに比べて若干緩和されているかもしれませんが、保有量の多い人がどんどんお金持ちになって行く仕組みである事には変わりは無いのかもしれません。
POIを採用している主要の仮想通貨
ネム(XEM)
DPOSのメリット・デメリット比較や採用通貨まとめ
DPOSとは、「Delegated Proof of Stake」の略で「委任する証明」となります。簡単に言えば「選挙制度」の仕組みを利用したコンセンサスアルゴリズムとなります。
POSでは通貨の保有量によって承認の権利を与えられていましたが、DPOSは保有量に応じて「投票する権利」が与えられるような仕組みとなります。つまり、通貨を保有している人は「投票権」を有しており、立候補者に投票を行う仕組みです。
その選挙で選ばれた人が承認者となり、報酬を得られる仕組みとなります。民主主義的なコンセンサスアルゴリズムといえます。
DPOSのメリット
承認スピードが速い
取引承認までに通貨保有者の多くが関わる事となりますが、実際の承認に関わるのは選挙で選ばれた少人数の為に、承認スピードは極めて速くなります。
DPOSのデメリット
通貨大量保有者が選挙を操作する可能性
例えば立候補者が裏で組んでいたり、通貨の大量保有者が集団で結託した場合、不正な取引を承認する可能性があります。つまり巨大政党のようなものが出来てしまった場合、組織的に選挙操作やデータ改ざんを行う可能性があるという訳ですね。
DPOSを採用している主要の仮想通貨
リスク(LSK)/イオス(EOS)など
POCのメリット・デメリット比較や採用通貨まとめ
POCとは「Proof of Consensus」の略で「合意による証明」という意味になります。主に仮想通貨リップル(XRP)や中国発のジップコイン(ZIP)で採用されている仕組みとなります。
これは他の仮想通貨とは違い、世界中の不特定多数で監視するシステムではなく、一つの企業によってブロックチェーンが管理される仕組みとなります。
POCのメリット
承認スピードの速さ
不特定多数の承認ではなく、特定の企業が承認してブロックが生成されるので、承認スピードが速いというメリットがあります。
戦略的に通貨の認知、浸透を進める事が出来る
例えばリップル(XRP)の場合、米国のRipple社が管理・運営を行っていますが、組織的に通貨の用途を増やすなどの戦略を組む事が可能となります。Ripple社は世界のブリッジ通貨を目指して世界各地の銀行や送金業者と提携し、実証実験を重ねています。
POCのデメリット
中央集権的である
承認者が一企業や団体など特定の承認者で管理している為、全面的にその企業や団体を信頼しなければいけない事になります。勿論、その特定の承認者がデータを改ざんしていた場合、その発見が難しい点はデメリットとなるでしょう。
POCを採用している主要の仮想通貨
リップル(XRP)/ジップコイン(ZIP)
コンセンサスアルゴリズムまとめ
マイニング(採掘)を行う際に、「コンセンサスアルゴリズム」は重要なポイントとなります。どの通貨がどの「コンセンサスアルゴリズム」を採用しているのかを良く理解した上でマイニングマシンを選ぶ方が無難です。また、それとは別に「ハッシュ関数のアルゴリズム」も存在します。同じ「アルゴリズム」ですが、意味は全く違うので注意しましょう。