SBIグループが決算発表で表明した仮想通貨事業の世界戦略 まとめ

SBIグループの北尾吉孝代表取締役社長は2018年7月31日の決算説明会で、仮想通貨交換所を運営するSBIバーチャルカレンシーズ「VCTRADE」の今年度の計画や、仮想通貨関連事業のエコシステム及び世界戦略などを公表して大きな話題を集めました。本ページでまとめたいと思います。

SBI仮想通貨交換所「VCTRADE」のサービス拡大 まとめ

SBIは今年度内に仮想通貨の現物取引開始

2018年7月17日から一般向けにも口座開設登録を開始する事となった仮想通貨販売所の「VCTRADE」は、2018年度内に仮想通貨の現物取引、株の売買で利用されるような「板」を利用した現物取引サービスを開始する事を発表しました。当面の間は、取引手数料を無料にする予定も発表しています。

SBIは仮想通貨の入出金サービスも開始

また、「VCTRADE」では仮想通貨の入出金機能が実装されていませんでしたが、十分なマネーロンダリング対策やセキュリティ対策を講じた後に開始する事を発表しています。

SBIでイーサリアム(ETH)の取り扱いも開始

仮想通貨時価総額2位となるイーサリアム(ETH)の取り扱いを追加する事も併せて発表されています。イーサリアム(ETH)はスマートコントラクトの技術を内包した機能を有した通貨で、通貨自体に「契約」の情報を持たせる事が出来ます。例えばポイントカードの割引契約などの情報を直接通貨に持たせる事が可能となります。SBIでイーサリアム(ETH)の取り扱いが開始されれば、大きな注目を集める事となりそうです。

SBIは仮想通貨交換所をテレビCMでプロモーション予定

規制の方向が明確となってから、の条件付きではありますが、北尾社長はテレビCMなどによるプロモーションの実施も検討しているそうです。但し、あくまでも「SBIは顧客中心主義」である事を念頭にしたプロモーションになるそうです。

仮想通貨市場は10年後に20兆ドル(約2237兆円)規模になる?!

現時点の仮想通貨市場の時価総額はおよそ33兆円です。
一部の専門家は上図のように、仮想通貨の市場は将来40兆ドル(約4400兆円)と予想している人もいますが、SBIの北尾社長は、仮想通貨の市場は向こう10年間で、最低でもその半分の20兆ドル(約2237兆円)規模に達するとの考えを示しています。

「仮想通貨がこのまま消えてしまう可能性はない」とも発言しており、「仮想通貨が将来非常な革命を齎すだろう」と強い期待を表しました。

20兆ドル市場へ向けたエコシステムの構築

  1. SBIバーチャルカレンシーズを通じた交換所の運営
  2. セキュリティ事業
  3. 機関投資家の誘致や資産運用
  4. メディアを通した情報提供
  5. トークンの発行・ICO
  6. プラットフォーム
  7. マイニング事業
  8. 送金
  9. 貿易金融

SBIのマイニング事業と世界戦略

SBI資料

SBIクリプトはビットコインキャッシュを中心に米国やスウェーデンでマイニング事業を開始していますが、2019年をめどに大手企業とマイニング専用チップを共同開発し、自社マイニングに使用したり、外販する計画がある事を発表しました。

2018年5月に同じくマイニング専用ASICの開発・販売を発表したGMOインターネットと同じく、今後は日本企業がマイニング事業を牽引して行く事になりそうです。

現在、SBIのビットコインキャッシュ(BCH)のマイニングシェアは4.3%ですが、今後は投資先との連携を図りながら、最終的にはマイニングシェアの3割まで拡大する目標だそうです。つまり、現在マイニング事業のシェアを大きく握る中国企業と真っ向から競争して行く事になりそうです。

前述の「エコシステム」を活用し、ビットコインキャッシュ(BCH)を安くマイニングする事が出来れば、安価にマーケットに流す事が出来るとし、また約10%の株式を保有している米国リップル社のXRPも安く仕入れる事により、同様の事が可能と話しました。

この世界戦略が実現すれば、SBIは仮想通貨業界において「胴元になれるチャンス」と大きな自信を見せています。

仮想通貨業界活性化の為の必要条件

またSBIグループの北尾社長は仮想通貨マーケットの再活性化への必要条件として5つの項目を挙げています。

日本仮想通貨交換業協会の自主規制団体認定

金融庁が自主規制団体を認定する事で、統一的な業界ルールの確立が加速する事になる。

機関投資家の本格的な参入

ルールの策定と、様々な商品や取引手法の提供によって、海外機関投資家を含む大手プレイヤー参入の後押しとなる。

米国SEC(証券取引委員会)証券論争の解決

2018年7月現在、イーサリアム(ETH)は証券ではない事が認定されました。リップル社のXRPも同様の認定が下れば、取引所への上場や送金の用途拡大が予想される。

仮想通貨の国際的な実用化へ向けた取り組み

SBIレミット、マネーグラム、ウエスタンユニオンなど国際送金業者がXRPを活用した国際送金を推進。また米リップル社は、デジタルアセットXRP並びに同社技術を活用したサービス・商品を開発する企業へ金銭的支援を行うイニシアチブを発表。

米国SECによる仮想通貨ETFの上場認可

米国だけではなく、日本を含む各国で同様の認可が進めば、より多くの流動性が生まれる事となる。

特に「米国SEC(証券取引委員会)の証券論争の解決」が喫緊の課題と呼べるかもしれません。これが解決される事で、米国を始めとした各国の取引所での仮想通貨を取り巻く環境が一変する可能性がありますし、米国SECによる仮想通貨ETFの上場認可も前進する可能性があります。

SBIグループの仮想通貨事業 まとめ

SBIグループは仮想通貨事業に大きく注力している企業です。マイニング事業もいよいよ事業本格化が明言され、2019年には新しい「マイニングチップ」の開発・販売を開始する事が発表されました。これが実現すれば、現在の「中国一強」の状況を大きく覆す事が出来るかもしれません。少なくともマイニング業界の状況が一変する可能性がありそうです。

北尾社長が言うように、10年後に仮想通貨市場が20兆ドル(2237兆円)規模まで成長するとすれば…、現在仮想通貨を保有していない、またはマイニング運用に参入していないのは、持たざるリスクとなる可能性があるかもしれません。

早めの参入を推奨したいと思います。

SBIホールディングスのクラウドマイニング事業