2019年は仮想通貨業界に新たな法整備「仮想通貨」から「暗号資産」へ名称変更など・報告書案まとめ

2018年12月17日、金融庁はビットコイン(BTC)などインターネット上で取引される「仮想通貨」の呼び名を「暗号資産」に改める方針を発表しています。

金融庁が「仮想通貨」の名称を「暗号資産」へ変更の方針

そもそも「仮想通貨」の呼び名は、日本独自で浸透した呼び方であり、世界的には「暗号通貨」と呼ばれる事が殆どでした。G20などの国際会議では近年、「暗号資産」と表現される事が主流となっており、日本でもこれに統一する方針だそうです。これを受けてSNS上では、仮想通貨は「通貨」ではなく「資産」なのか、といった様々な意見が飛び交っています。

菅官房長官も記者会見で「暗号資産」への名称変更を示唆

尚、菅官房長官も2018年12月17日に行われた記者会見で「仮想通貨」から「暗号資産」への呼称変更を示唆しました。

菅官房長官談
「G20をはじめ、国際社会の中で『暗号資産』という表現が使われ始めております。また『通貨』という呼び方が法定通貨との間で誤解を生みやすいと、そうした指摘もあります。そういったことを踏まえて、金融庁の研究会において法令上の呼び方について『暗号資産』に変更するという方向性が示されている。そういう報告は受けています。いずれにしても、研究会の議論を踏まえ、金融庁が適切に対応すると思います」

注目すべき点としては、「通貨という呼び方が法定通貨との間で誤解を生みやすい」と言う部分でしょうか。仮想通貨は「通貨」ではなく「資産」であるとの認識を示した可能性も有りそうです。

仮想通貨は2018年の流行語大賞候補にもなっている

金融庁の仮想通貨交換業に関する研究会の議論では、「国際的な動向を踏まえれば、日本だけが『仮想通貨』を使い続けることは具合が悪い」といった指摘が出ていました。

しかしながら、2018年の流行語大賞の候補に「仮想通貨」が挙がったように、既に日本では「仮想通貨」の名称が浸透しています。過去に開催された研究会では、「新しい名称ができることで、新しい良いものができたと世間に誤解を与える可能性がある」といった危惧する声も出ていたそうです。名称変更に関しては賛否両論がありそうですね。

2019年に仮想通貨業界は大幅な法規制が行われる可能性

いずれにしても「仮想通貨」を「暗号資産」への名称変更をするタイミングで、ICO規制やレバレッジ規制などの法整備が進むと予想されます。来年の通常国会に資金決済法や金融商品取引法の改正案を提出するなどの報道も出ており、仮想通貨(暗号資産)業界は2019年に大きな転換点を迎えそうです。

尚、一部報道で報じられた「報告書案」は以下の通りです。

◆顧客財産の管理・保全の強化

2018年に流出事件が多発した問題で、流出リスクへの対応の為に、ホットウォレットで保管する仮想通貨に相当する額以上の純資産額及び、弁済原資の保持を求める方針。

◆自主規制団体との連携

仮想通貨交換業者の適正な業務遂行を確保する為、過剰な広告・勧誘を行わない事や認定自主規制団体との連携などに言及。認定自主規制団体に加入していない交換業者に対しても自主規制の効力が及ぶような仕組みを整える方針。

◆問題のある仮想通貨の取り扱い

匿名性の高い仮想通貨については、マネーロンダリングに悪用される可能性が高い為、懸念材料とされていた。これに関しては、「問題がある仮想通貨を予め法令等で明確に特定することは困難」な為、「現状、行政当局に対する事後届出の対象とされている仮想通貨交換業者が取り扱う仮想通貨の変更を事前届出の対象とする」方針。

◆風説の流布や相場操縦などへの対応

インサイダー取引や風説の流布など、相場操縦の禁止といった措置を課す方針。また仮想通貨交換業者に対しては、不公正な行為の有無の審査を求め、そうした行為が判明した場合には、取引停止といった措置を求める方針。

◆仮想通貨カストディへの対応

登録制や内部管理態勢の整備、仮想通貨の分別管理、弁済原資の保持といった規制を行う方針。

◆仮想通貨デリバティブ取引への対応

仮想通貨のデリバティブ取引については、ほかの資産のデリバティブ取引と同様の業規制を適用することが基本だとする考え方を示しています。

◆ICO規制

「ICOの性格に応じて、投資商品の販売と認めれるものについては投資に関する金融規制を、支払・決済手段の販売と認めれるものについては決済に関する規制を、それぞれ参考にしながら、必要な対応を行うことが適当と考えられる。

◆業規制を設ける場合の経過措置

仮想通貨デリバティブ取引などに業規制を導入する際、経過措置として「みなし業者」を置くことになるが、その際は以下の対応を示している。

業務内容や取り扱う仮想通貨等の追加を行わない

新規顧客の獲得を行わない(少なくとも、新規顧客の獲得を目的とした広告・勧誘を行わない)

ウェブサイトに登録を受けていないことを表示する

◆「仮想通貨」から「暗号資産」への呼称変更

前述の通り、世界的に「暗号資産」の呼称が主流の為、日本でも足並みを揃える方針。

◆その他

行政コストについて

仮想通貨交換業者に金融庁が求める最低資本金1000万円は安過ぎるとの声。もう少しハードルを上げる可能性も。

新規コインについて

交換業者が新たな仮想通貨を取扱う際に、発行者から一定量のコインを受け取るなど経済的な便宜を受けて上場させるケースがあるという指摘も出た。こういったものへの規制強化。

ハードフォークへの対応

交換所で取扱うコインは、金融庁が事前審査を行う。しかし、コインがハードフォーク(分裂)した場合はどうするのかについては課題を残す。

仮想通貨は2019年に暗号資産として、新たな法整備と共に生まれ変わる可能性がありそうです。しっかりとした法整備が行われる事で、現在低迷している仮想通貨(暗号資産)市場も活気付く可能性もありますね。2019年の展開に期待したいところです。